先ほど、「小説の書き方」とは「書くこと」が積み重なったものと説明しましたね。
その時、「書くこと」の例として日記や作文、読書感想文を紹介しました。

もちろん、日記や読書感想文は小説ではない、と思う方も居るでしょう。
ですが小説は、すなわち物語は「誰かが何かを行動をした結果、何かが起こった」という形が基本です。
皆さんの書いた夏休みの日記なども、そのような内容になってはいませんか?
例えば、このように。

7月30日。とても暑かったので学校のプールへ行った。プールは涼しくて気持ちよかった。

というよくある日記の一文は、実は物語の形態になっています。
「日記を書いた人(筆者)は、暑かったためプールへ行くという行動を取った結果、気持ち良くなった」
というものです。
つまりこれを小説にすると、例えば以下のように書けますね。

7月30日。夏休みに突入してから連日続く茹だるような暑さに、僕の心は自然と涼を求めていた。プールへ行こう。プールへさえ行けばすべて解決する。使い古したビニールバッグに水着とタオルを詰め込んでーーいや、もう下に水着を着てしまおう。プールへ着くなり服を脱いで飛び込めば、きっと最高に気持ちがいい。更衣室での着替えも準備体操もおざなりにして、僕はプールへ飛び込んだ。想像通り、気持ちいい。

あるいは、こういうのもアリかもしれません。

小学生の八雲は、下着が見えることも厭わずスカートをばさばさと振るった。暑さでどうにかなりそうだった。ふと、今日は学校プールの開放日だったことを思い出した八雲は、まるで涼を求めるゾンビのように炎天下の中をふらふら歩く。更衣室で着替え、準備体操に焦らされてからのプールはやはり格別だ、八雲の顔には自然と笑顔が浮かんでいた。

もちろん、もっと短く、端的に書くこともできます。

7月30日。暑さに負けてプールで泳いだ。暑いからこそ冷たいものが気持ちいい。お父さんがビールを美味しそうに飲む気持ちが少しわかった。

児童文学風にするのであれば、

暑くてたまらなかったぼくは、プールへ行こうと決めた。ぼくはプールが大好きだ。勉強よりは好きだけど、オヤツよりは好きじゃない。だから決めたからには準備をしよう。ビニールバッグに水着とタオルと、水中メガネを入れて、忘れ物はないかなと指差しして確かめる。そうだ、せっかくだから大好きなおかしも入れていこう。好きなものをいっぱい詰め込んで、よし、準備ばんたん。プールへ出発進行!

などなど、ありふれた日常のワンシーンでも、いろいろな書き方をすることができるのです。
なぜ私がこのように書けるのか。それこそ「書くこと」を続けてきた証です。

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